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午後1時が近づくと、
いつも、
泣きそうになる……

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「今日もここで、彼を。」
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今日もここで、彼を。




    内藤みか




☆第一話☆



 午後1時が近づ
くと、いつも、泣
きそうになる。
 今日も、彼に会
えないのかな、と、
さみしくて。だけ
ど、会社に戻らな
くちゃならなくて。

 お昼休みが終わ
ってしまうから、
しかたなく、のろ
のろと、席を立つ。
 街は少しずつ春
に近づいていて、
窓の外の光は、日
ごとに明るく温か
くなっていく。
 このカフェに入
ったのは、偶然だ
った。いつも行く
カフェが臨時休業
だったから。それ
でもどうしてもコ
ーヒーが飲みたか
ったから……。
 東京でひとり暮
らしをしているO
Lの私には、自由
になるお金なんて、
あんまりない。
 カッコいい場所
で働きたくなって、
表参道の小さな商
社に去年、転職し
た。普通の事務の
仕事。少しだけ英
語ができるから重
宝がられている。
 会社の仲良しの
女の子達数人で、
毎日のようにラン
チを食べに、外に
出る。デザートも
つけると時に千円
をオーバーしてし
まう。だけど、や
められない。やめ
るわけにはいかな
い。このランチの
ために、表参道で
OLしているよう
なものだから。
 毎日のように新
しいカフェやショ
ップがこの街には
オープンしている。
みんなでそこを訪
れて、ランチする。
プチグルメ旅行み
たいで、それが楽
しいのだから。
 すごく行列がで
きていてあきらめ
て他のお店にする
こともあるし、有
名人とお店で遭遇
して「ちょっと、
あそこにいる人、
○○なんじゃない?
」なんてコソコソ
話をしたり。
 ランチの旅は、
いつでも何かしら
のハプニングを私
たちに与えてくれ
る。お昼どきのそ
の刺激があるから
こそ、毎日のOL
仕事もやっていけ
るのだと思う。だ
から、ランチ代は、
ケチったりは、し
たくなかった。
 誰かが恋に悩ん
でいたりすると、
その相談で盛り上
がったりして、ラ
ンチの時間いっぱ
いカフェに居座っ
たりすることもあ
るけれど、大抵は、
あと十五分くらい
時間を残して、店
を出る。
 そこからの時間
はわりとなりゆき
まかせ。近所の雑
貨屋さんをのぞい
てみたり、本屋さ
んやコンビニに寄
ってみたり。
 会社に帰ってお
化粧直しに燃えて
みたり。ケータイ
で友達にメールを
打ってみたり。午
後一時になるまで、
なんとなく過ごす。

 あの日は、みん
な、確か、コスメ
ショップに行こう
と言っていたはず
だった。だけど私
だけ、ひとり、カ
フェに寄った。
 前の日遅くまで
映画を観ていて、
その日、とても眠
くて眠くて仕方が
なかった。ランチ
がおそばだったの
で、コーヒーはつ
いてはいなかった。
眠気覚ましのため
に、コーヒーがど
うしても必要だっ
たのだ。
 このカフェのこ
とは前から知って
いたのだけれど、
何となく高そうだ
ったから遠慮して
いた。ランチにも
コーヒーにもオカ
ネをかけられるほ
どお金持ちじゃあ
ないから……。 
 やっぱりそこは、
コーヒー一杯が、
なかなかなお値段
をしていた。それ
なのに私は最近、
毎日のように、こ
こに通っている。
 あの人を、待っ
ているから。
 もう一度、あの
人と会いたいから。
友達には「最近あ
のカフェのコーヒ
ーにハマっちゃっ
た」と言い訳した。
特に友達の鮎美に
は本当の理由を言
うわけには、いか
なかった。
 だってあの彼は、
鮎美のモトカレだ
ったから……。


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