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<ラブリンク>
内藤みか
第6話
浩介は目をみはった。
「アニキが、ですか?」
ははッ、と彼は乾い
た笑いを漏らした。目
尻を愉快そうに下げた。
「そりゃないですよ。
だってアイツはフリー
ターしてるとはいえ、
結構、根はマジメな男
ですからね」
私が投げた言葉なん
て、冗談としか受け止
められていないようだ
った。
「特に女には一途です
から。いくら金に困っ
ても、そういう仕事に
は、さすがに手を染め
ないんじゃないかなあ。
アイツ、今の彼女に惚
れ抜いてるし」
「……彼女?」
聞き流すことができ
なかった。私の顔がひ
きつったのを、浩介は
気がついただろうか。
「そう。仲いいんです
よ。もう五年も付き合
ってるし」
屈託なく彼が笑う。
スポーツ選手にふさわ
しい、白い大きな歯。
汚れた世界のことなど
何も知らなそうな彼の
顔を、私はぼんやり眺
めた。
Jリーガー・安藤浩
介は、ずいぶん鈍感な
男のようだった。
彼は気がついていな
い。
私の顔が引きつって
いることも、声が震え
ていることも。
自分が兄の“営業妨
害”をしてしまったこ
とを、わかってはいな
い。
(恋人が、いたんだ)
出張ホストは誰もが
「彼女? いるわけな
いでしょ」
と答える。
「彼女がいたりしたら、
一緒に女の人と街を歩
く出張ホストなんてや
れるわけないじゃん」
と。
もちろん、それを素
直に信じる私ではなか
った。
出張ホストという職
を選ぶくらいなのだ。
ルックスに自信を持っ
ている男の子が多い。
彼女がいないほうが
変だ。
安藤浩介の兄・亮太
は「リョウ」という名
前で出張ホストをして
いた。彼の顔は、会員
制出張ホストクラブ
「レディ」のホームペ
ージで公開されていた。
パスワードを知って
いる女性しか見ること
ができない画面には三
百人を超えるホストの
顔写真がずらりと並ん
でいた。
亮太の顔は、その中
でも結構目立った。浩
介に色気を加えた悩ま
しげな目線が、指名し
た時に起きるかもしれ
ないドラマを期待させ
た。
だから、彼を選んだ。
三ヶ月前のことで、そ
の時まだ亮太は仕事を
始めたばかりで、初々
しい感じだった。
(彼女、いたのね)
今まで彼に傾けてい
た情熱が、急激に薄れ
ていくのがわかった。
アルタの5階のエレ
ベータの扉が開き、数
人が降りた。その中に
亮太がいて、こちらに
ごめんごめんと両手を
合わせて小走りに近づ
いてきた。
(彼女いるくせに、私
と、あんなこと、した
のね)
私は彼をちょっとだ
け睨みつけた。
(第7話に続く)
「ラブリンク」は新潮
社より1月30日に出
版予定です。
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