恋愛症状(内藤みか)徳間文庫より11月5日・発売!

 彼に、誘いをかけてみたことくらいは、ある。

 何もされずに出ていかれるのが、最初のうちは悔しくてならなかったからだ。
 普通、ひとり暮らしの女の部屋に、若い男が泊まりに来たら“そういう関係”になるのが自然な流れ、なのではないだろうか。

 だのに、彼は、私を抱かない。

 抱かれないままに、私は彼と、もう数回、朝を迎えている。
 彼、ノブユキは、私が大学時代にバイトをしていたレンタルビデオ店の社員で、私より二つ上だった。

 ビデオ屋は、私のマンションの目の前にあるので、OLになってからも、何度も通 っていた。そのたびに、彼とたわいもない話をした。

「どう、元気?」
「今日は何、観るの?」
 などなど。本当に大したことのない、当たり障りのない話だけ。バイトをしている時は、しばしばみんなで飲みに行ったり遊びに行ったりしたものだけど。ノブユキは私のことをわりと可愛がってくれて、おごってくれたり、家まで送り届けてくれたりもした。もうそれも半年近く昔のことだ。

 多分、妹みたいに思ってくれていたのだろうと思う。会う度に、頭を撫でたり、にっこり笑ってくれたり、と、子ども扱いをしていたから……。
 だから、ノブユキが私の部屋で眠っていくのには、恋愛感情とかそういうものは、ない、という気がするのだ。

 ただ単に、彼が終電に間に合わなくなっただけ、なのだろう。そう自分に言い聞かせて、この不思議な関係を理解しようとするのだけれど、回を重ねるたびに、女としての自信がなくなっていく。ノブユキが何も動じない様子で近くの布団で寝息をたてているのをドアごしに感じると、私って魅力ないのかなぁ、と、ひどくせつなくなる。実際に迫られたら、少し困るとは、思うのだけれど。

 私の部屋は、ただ単に、彼のための宿泊所なのだろうか。
 そろそろ、いい加減にしてよ、と怒ったほうが、いいのかもしれない。
 そう考えることもある。

 だけど。
 困っているのだから。
「泊めてもらえなかったら野宿かも」
 なんて言っている人を追い返すことは、できない。

 優しすぎるのかもしれないけれど、終電もなく、タクシー代もない彼を、追い払うことは、できない。ノブユキも私の優しさにつけ込むかのように、何度も訪れるようになった。 だから私達は恋人でもなんでもないのに、何度も一緒に夜を過ごしている。もちろん、セックスも、抜きで。


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